和歌山・新宮の絶品「釜揚げしらす」

おいしさのヒミツは水揚げから加工までの時間。
鮮度を落とさず釜揚げしらすに!

2017 5 6 日放送
「和歌山・新宮の 極上シラス!」(1) 

2017 5 13 日放送
「和歌山・新宮の 極上シラス!」(2) 
 大阪からJRの特急くろしおで4時間、車なら4時間半~5時間かかる、近畿で大阪から最も遠くにある町、和歌山県新宮市。太平洋に面したこの町で、絶品の「しらす」を全国に届ける名人がいる。

海に出れば、熊野灘で5隻の船団を率いる漁師。陸に上がれば、地元の水産会社「王子水産」の4代目という、若きリーダー、中村竜彦さん(29歳=取材当時)。 
  
取材の前夜、JR新宮駅近くのホテルに着いてほどなく、中村さんがやってきた。初対面でまず、その強面(こわもて)の風貌と体格に、私はたじろいだ。 
体重130kg。高校まで柔道をして、県大会でも上位になった筋骨隆々の体つきは、本物だ。 
だが、しらすの話を聴くと、あふれるばかりの笑顔と愛情で、「しらす愛」を語る。 
「ウチの釜揚げしらすは、間違いなくおいしいです。 
何といっても、競りを通さないで、半日時間を短縮していますから。」

 

ん?競りを通さない? 
  「はい。新宮のしらすの漁業権はウチの会社が独占しているんです。」

  へー。実に面白い。そんな工夫があったのですね。

夜明け前から出漁して、午前6時頃、水揚げ。 
直後に中村さんは、船から携帯電話で保冷車を漁港に向かわせる。 
船上では、大量のしらすを氷水で冷やして 
既定のかごに分けて、積み上げていく。

 
全速力で港に戻る漁船。  
さあ、着いた!
あっという間に、船から保冷車にかごを積み替える。  
すぐに車が出発。  

   

工場に着いた!  
大きな釜のお湯が煮えたぎっている。  
コンテナのしらすを一気に入れて、釜揚げしらすが完成!  
  
この間、わずか47分。  
普通ならまだ競りにかけるずっと前。  
だが王子水産ではもう商品が出来上がっている。  
見事な早業に、唖然とする。 
  
中村さんは言う。
「鮮度の徹底。しらすはスピードが命です」 
  
更に、 
「釜揚げ用に巨大な浄水器を2台取り付けて、ミネラルウォーターでしらすを洗浄しています。 
それから、塩はあちこちの塩をテストして、今は淡路島の塩がしらすにベストだと分かったので、使っています。全部にこだわりたいんです」

 
食べてみた。 
ふわふわだ。 

  まるでかき氷のように、舌の上で、しらすが解けていくような感覚。 
こんなにふわふわなしらすは、 今まで50年余り生きてきて、食べたことがなかった。 
そして、ねばりつく感じはなく、1匹1匹が「パラパラ」でもある。 
実によく出来ている。


食べるなら春が旬。今年は2月~4月がベストだった。 
  
これから秋にかけてのしらすは、 
ふわふわでなく「つるつる」な食感になるという。 
「こちらも、皆さんに楽しんでほしいですね」 
  
中村さんの笑顔が、またはじけた。

 
 
 
 
 

〈取材・記事〉 榛葉 健
毎日放送「産直ダイスケ」のプロデューサーでドキュメンタリー制作者。
阪神・淡路大震災では特別番組を
15本制作し、その1作「with若き女性美術作家の生涯」は、日本賞・ユニセフ賞、アジアテレビ賞など受賞。世界最高峰チョモランマに3度撮影に行き2年間極限の自然を撮影した「幻想チョモランマ」は海外でも放送された。
テレビやラジオの制作をしながら、東日本大震災の被災地に通い続けて、私費で映画「うたごころ」シリーズを制作。国内外で上映の輪が広がる。福島の原発事故で被害を受けた畜産農家の苦闘を5年間記録した新作「被ばく牛と生きる」は、ドイツやアメリカの映画祭で受賞し、国内でも平和・協同ジャーナリズム賞や農業ジャーナリスト賞を受賞。
2017年に立ち上げた「産直ダイスケ」では、日本各地で農業・漁業に奮闘する人々の情熱を取材し、絶品の生鮮品を紹介している。