今が旬!
和歌山・白浜町の「とびきりおいしい鮎」

天然の鮎に限りなく近い状態を守り抜いている OGATA養殖研究所!

2017 6 17 日放送
「和歌山・白浜の 絶品アユ!」(1) 

2017 6 24 日放送
「和歌山・白浜の絶品アユ! 」(2) 

取材:2017年5月  放送:2017年6月

絶品の鮎を求め、南紀白浜へ

日本有数のリゾート地・和歌山県白浜町の白良浜から、車で20分ほど内陸部に走る。富田川沿いの静かな集落の中に、それはあった。
「OGATA養殖技術研究所」。

一見、いかつそうな名前だが、取材をして、おいしい鮎(あゆ)を作るために、真摯な研究と努力を積み重ねてきた「証」なのだと分かった。
鮎の養殖に取り組んで36年(2017年取材当時)の緒方徹さん。地元で子どもたち のバレーボールのコーチをするなど、地域の活動にも熱心な人だ。

10か所ある生け簀では、年間52万匹~60万匹ほどの鮎を育てている。大半は市場(しじょう)に出され、東京・築地ではトップクラスの評価を得て、他より高い相場で取引されているという。また年間約5万匹は、地元のホテルや料亭、京阪神のレストランなどにも出荷されている。味の分かる料理人は、こぞって言うそうだ。

「緒方さんの鮎を、使いたい」と。


そんな緒方さんの仕事は、夜明け頃から始まる。
太陽が昇ると、人影がちらついて、鮎が驚いて激しく動くのだそうだ。

「影や大きな音に敏感なんです。鉄板の上を歩く時には、音を出さないように、そーっと歩きます」 

特別なブランド「山形F1」

ここにいる鮎は「山形F1」と呼ばれている。元々、”日本三大急流”のひとつと言われる、山形県の最上川に棲息する天然の鮎から、卵を人工授精させて育てている。

そこで育った鮎を更に受精させて、養殖を繰り返すことはしない。
つまり「一代限り」。味を維持するために、天然に限りなく近い状態を守り抜いている。
そんな緒方さんの愚直な姿勢が信頼を勝ち得て、「山形F1」の生みの親から14年前に県外に持ち出す許可を得た。鮎の養殖業者で許可を得ているのは、日本中で緒方さんだけだ。

「顔は細長く、体長は長い。遊泳能力があるのが特長で、身質がまろやかなんです」

かつて緒方さんは、大失敗を経験している。山形から10トラックで幼魚を運んで来た際、魚が病気にかからないように水に混ぜる塩の量が分からず、運搬中に半分死なせてしまったのだ。

「早く大きく育てて金に換えたい業者は、近場で養殖向けの稚魚を買った方が、仕入れ値も運送費も安くなるから、良いんです。でも、私はそれはしません。『山形F1』の味を皆さんに届けたいんです」 

味を守るため、不断の努力を。

 
緒方さんの努力は、これに留まらない。
他にも、おいしい鮎を育てるために、様々な工夫をしている。

餌は、国産の魚粉(北海道・釧路、青森・八戸産)のみを使用。安くするならペルー産、チリ産といった外国産の餌を使うが、味を守るため、餌の選定にはこだわり続けている。
「ウチみたいな小さな養殖場でも、餌代はざっと年間2000万円はかかるんです。
餌代は、経費の中で断トツに高いですが、おろそかにはできません」

また、鮎の習性を使った、こんな工夫もしている。

「夜中に電気をつけて、鮎たちに日中だと錯覚させたり、逆に夏は電気を消して、『もう秋が来たんだ』と鮎たちに錯覚させて、一足早く《子持ち》を作ったりもします」

更には、ストレスを与えないように、生け簀に鮎を入れ過ぎず、自由に泳げる空間を確保したり、生け簀の水は、人間が飲めるレベルの水質を確保したりと、鮎への努力を惜しまない。
36年の間に培った技と努力で、美味しい鮎をさらに進化させようとしている。
 

季節ごとの逸品を届けたい。

緒方さんの鮎は、種類によって、出荷の時期が分かれる。

▼3月:稚鮎
▼5月~7月:レギュラーの鮎
▼8月下旬~9月:子持ち鮎

一般の子持ち鮎の出荷は10月~11月頃。だが緒方さんは、一足早く出荷する。
それにもこだわりがあった。

「10月まで待つと、魚体の30%程度まで卵の量が増えてしまって、食感が落ちるんです。そのため私は、20%程度の子持ちの状態に留めています」


緒方さんは、指で魚の腹を触るだけで、卵の量が分かるのだそうだ。

更には、魚体の厚みの微妙な違いから、ストレスの程度まで推測できるという。
「長年やってますからね。(笑)。
健康な魚ほど、顔を出して水面で食べてますよ。頭を転がして
鮎の話をする時の嬉しそうな表情。
この人は、本当に鮎が好きなのだ。
真っ黒に日焼けした緒方さんの目の奥が、笑っていた。



 
 
 

〈取材・記事〉 榛葉 健
毎日放送「産直ダイスケ」のプロデューサーでドキュメンタリー制作者。
阪神・淡路大震災では特別番組を
15本制作し、その1作「with若き女性美術作家の生涯」は、日本賞・ユニセフ賞、アジアテレビ賞など受賞。世界最高峰チョモランマに3度撮影に行き2年間極限の自然を撮影した「幻想チョモランマ」は海外でも放送された。
テレビやラジオの制作をしながら、東日本大震災の被災地に通い続けて、私費で映画「うたごころ」シリーズを制作。国内外で上映の輪が広がる。福島の原発事故で被害を受けた畜産農家の苦闘を5年間記録した新作「被ばく牛と生きる」は、ドイツやアメリカの映画祭で受賞し、国内でも平和・協同ジャーナリズム賞や農業ジャーナリスト賞を受賞。
2017年に立ち上げた「産直ダイスケ」では、日本各地で農業・漁業に奮闘する人々の情熱を取材し、絶品の生鮮品を紹介している。